オウゴンノココロ

スピーカー、合板、プログラム、音声合成ソフトウエア、コンピュータ、1995年

作品《オウゴンノココロ》は、キャビネットのような黒い箱に6つのスピーカーが取り付けられ会話が聞こえるインスタレーションである。スピーカーからは、異なる人格を設定した六人の会話が聞こえる。実際には誰もいないのに、話し声が聞こえるだけで、人がしゃべっているような印象を受ける。会話の言葉は、あらかじめ登録されたデータベースを使用して、音声合成ソフトを用いて作られた。

この作品は、1994年に、児玉が筑波大学芸術研究科の総合造形プログラムの修士2年であったとき、アーティストであり筑波大学教授の河口龍夫の授業で行われる学生のグループ展「遺伝カタログ~未来の父へ~」のために作られた作品が発端となっている。一台のパソコンから直接音声だけを再生する作品として(外付けスピーカーは使用せずに)音声合成ソフトVC2を使った会話シミュレーション作品「オウゴンノココロ」を出品したものが最初の展示だった。1995年開催のARTECより前に、第3回ふくい国際青年メディアアート・フェスティバルに6つのスピーカーとゲストが会話する「Friendship Saver~疑似友情入力装置~(※)」の作品を提案して優秀賞を頂いた。その後、名古屋で開催されたARTEC’95の国際公募展に応募し、6つのスピーカー(六人の人格を模している)が会話し続ける作品として入選し展示された。(ARTECは、かつて名古屋で開催されていたメディアアートの国際公募展である。)

※「Friendship Saver~疑似友情入力装置~」(1994年)の作品提案より:  

「ゲスト」には5つの言葉が用意されている。「ゲスト」が椅子に座りマイクに向かって5つの言葉をしゃべり、コンピュータに音声を登録した後、スタートボタンをクリックする。「ゲスト」の前には、スピーカーの入った大きな黒い箱が立っていて、6つのスピーカーを通してコンピュータから6つの人格らしき言葉がそれぞれ、流れてくる。やがて6人はお互いに話し始め、時おり「ゲスト」にも質問を投げかけてくる。「ゲスト」は用意された言葉で答える。そして、「ゲスト」の言葉に応じる形で7人(6人+ゲスト)の会話は続けられる。・・・その場所には、「ゲスト」の他には誰もおらず、実際にはパーソナルコンピュータに向かって1人で座っているだけである。それが、話し声が聞こえ、それらと自分との間にコミュニケーションが成り立つとき、そこに人間がいるような印象を受ける。